医療が細分化されて、理解が難しい高度医療の世界に突入し、年々その進化のスピードは速くなっています。まさに日進月歩であり、患者からすればいいことである反面、どの歯科クリニックにかかればいいのかだけでなく、そこでどの治療を選択したらいいのかなど迷うことが多いのが現状です。新しいクリニックが増え、目新しい治療の情報があふれているのも確かです。どれをどんな基準で選んだらいいのかわからないので、とりあえず自宅や職場の近くの歯科クリニックに、どうしても痛みが引かないなど緊急性のあるときに駆け込み、なんとなくそのまま必要があれば、そこに通っているという人も多くいます。
日本では歯科医師の免許を持っていれば経験や専門研修の有無に関係なく、誰もが歯科矯正をおこなうことが可能です。歯科医療もほかの医療と同じく専門性を求められる分野です。アメリカでは専門分化はかなり進んでいますが、日本は先進国一遅れています。それぞれの歯科分野において、きちんと専門研修を受け、常に精度に磨きを掛けている歯科医を自ら選んでいくことが重要です。
しかし、自分の責任において選んでいくのであればそれなりの知識が必要になります。満足のいく治療を受けるためにも学びが必要です。歯科クリニックにはできれば行きたくない、それどころか最も嫌いな診療科が歯科だという人も多くいます。実際に医師でさえも自分の治療は先延ばしにしがちですから、仕方のないことかもしれません。
だからこそ上手に歯科医にかかる方法を知っておくことが重要です。医療の現場では歯科の分野だけでなく、日々たくさんの新しい研究がなされています。あまりにもたくさんの情報がありすぎても迷いが出てしまいますが、必要最低限の新しい情報や患者に対して伝えておくべき情報がある程度、ホームページはもちろんのこと、待合室で提供されていれば良心的な歯科クリニックともいえます。待合室に入った時点で、そこの院長の考え方をうかがうことが可能です。
確かにおしゃれなインテリアや雑誌も大切ですが、歯医者の待合室というのは、待っている間にリラックスができ居心地がいい上に、勉強になる情報があるのが理想です。入った瞬間の印象というものが大切になります。そういう意味では、入ったときに必ず通る受付の対応というのも重要なポイントです。キレイな若い受付嬢に男性は弱かったりするものですが、受付の女性あるいは男性の教育をしているのは院長あるいは院長夫人になります。
たとえ、若くなくても心証がよければ間違いないです。院長の意思により対応の仕方も違ってきますし、受付の人に気に入ってもらうというのも上手な歯科へのかかり方になります。初めて訪れる歯科クリニックの診療室の第一印象はとても大切です。歯科医にとっては、何千人の中のひとりでしかありませんが、患者からすればできれば行きたくない歯医者にたった一人、決死の覚悟で選んできたわけです。
そのため、選んだ歯科医の一挙手一投足すべてが大切な情報になります。まず、初診のときにマスクをはずしているかが重要です。そして、最も大切なのはそのときの姿勢で、治療用のユニットに横になったままの状態で話さなければならないようなら少し考え直してみます。訪れたほうは不安や恐怖でドキドキしていることがほとんどです。
それに対し、マスクをしたままの状態で挨拶をされ、寝かされたままで今の状態を説明するように言われても難しいといえます。大切なことは抱えている悩みをいかに聞きだせる人物であるかということです。できれば足を運びたくない歯医者に来たということは、それ相応の悩みがあってのことですから、どうしてそんな状況になったのか、今までの苦労やほかにどんな治療を受けてきたかなど、これまでのストーリーをいかに聞き出し、まとめて、本人に合った治療方針を立てられるか、そこを見極める必要があります。今までの経緯を時間をかけてしっかりと聞いてくれるかどうかは大事なポイントです。
歯科クリニックに行ったとしても自分では治療の内容やその方針がわからないことがほとんどです。そのため、治療の希望を歯科医に伝えることが大事です。基本的なものでは、なるべく歯を抜くことなく、もし削る必要があるのなら必要最低限にしてほしいことを伝えます。加えて神経を抜いてしまうと歯が死んでしまうので、なるべく神経は抜かずに生きたままで使えるようにしてほしいなどの要望を伝えることも大事です。
また、歯に入れる材料に関して、その素材が何であるかを明らかにしてもらい、有害なものはなるべく避けてもらうようにすることも大切です。その際、できれば筋反射運動を使い、自分に合った材質を探してもらうようにします。さらに自分の症状に合わせた歯ブラシやブラッシングの指導を受け、できれば食事指導も希望する旨を伝えておきます。加えて、ひとつの症状に関してでもセカンドオピニオンはないか教えてもらいたいということや、保険診療と自由診療の違いを教えてもらうことも大事です。
これら全てを要望として伝えれば、医師は緊張し丁寧に診療や説明をすることは確実です。一方で、怒り出す医師もいるかもしれません。コミュニケーションのとり方には注意し、要望に応えてくれる医師かどうかを見極めていきます。実際に歯科クリニックを訪れ、最も不安で嫌なことといえば治療を受けることです。
ただでさえ、怖いことなのに何の説明もしないまま治療を始められたのではたまりません。これからおこなわれる治療がどんな内容で、何のために行われるのか、まずはしっかりと説明を受けるようにします。忙しいから痛みが取れればいいので、早く治療を終わらせてくれと言う人もいますが、きちんと説明を受けてから治療を開始することが大事です。歯科医でなくても歯科衛生士や助手に聞いてみるのもひとつの方法です。
また、治療中に具合が悪くなったり、痛みが強いときには遠慮なく手を挙げてよく、そこに我慢は無用と覚えておきます。そして、その日の治療が終了したら、必ず今日受けた治療に関しての説明や次回の治療に関する説明をしてもらうことが重要です。遠慮をする必要はなく、ここでの態度も見極めるポイントになります。治療が始まる前と治療が終了した後にレントゲン写真などを参考にしながら説明してもらうのがわかりやすいです。
最近ではユニットの近くにモニターを設置して移動することなくレントゲン写真をみられるところも多いですので、そういった設備面も確認しておくことも大事になります。歯は唯一、ほかの体の組織と違い、自然治癒力をもたない器官です。いったん穴があいてしまったり、かぶせてしまった部分は一生そのまま残ります。しかも歯の噛み合わせは密接に頚椎や腰椎などの脊柱に大きな影響を与えます。
そのため、歯を治療するときの材質や大きさ、高さ、出っ張り具合というのは全身に大きく影響するわけです。口の中は最も外界からの危険を瞬時に感じて危険を回避する必要があるので、非常に敏感にできています。靴の中に髪の毛が1本入っていてもそう気になりませんが、口に中には繊維くずが1本入ってきてもたまらなく不快に感じるものです。つまり、歯科治療しだいで健康を害してしまう可能性も高いということです。
逆にいえば、虫歯を放置し続けるとそれが原因で歩けなくなることもあります。入れ歯も自分の歯もない寝たきりの認知症患者が総入れ歯にした途端に、はきはきとしゃべりだし、普通に歩けるようになるという事実もあります。歯は噛むだけでなく、全身のバランスを保ち、健康を維持するためにとても重要です。そのため、インフォームドコンセントとセカンドオピニオンにたっぷりと時間をかけ、説明してもらうことが大事になります。
それも嫌がるような歯科医がいるようなら、転院するのもひとつの方法です。